2007.12.10 遭遇(8)
                    蝶は知っている

                  消さなければならない

                 自分を生み出した作り手を・・・。

           それが自分の存在を証明する唯一の術だから・・・。







                          (8)




            人は心に衝撃を受けると頭の中が真っ白になる・・・・・。

      それはこれ以上ダメージが心に届かないように、人間自身が取る対処のかたちである。

      僕の心はもう三日も空白のままだ、真っ白な世界にただただ閉じこもっている。

      学校には行っていない・・・・・・。とても行く気分にはなれないから・・・・・。

      三日前、いつもの様に朝に家の前で分かれてから、秋乃は事故にあった。

      幸い一命は取り留めたが、いつ容態が変わるか分からない危険な状態らしい・・・。

      僕はすぐに病院に駆けつけたが、集中治療室に入っている秋乃に会えるはずも無く

      ただただ外で待つことしか出来なかった。結局その日は秋乃に会うことは出来なかった。

      僕は家に帰ってから、こうして三日間を空白の心のまま過ごした。

      生命を維持するため、作業的にパン1個と水道水を摂取し、またベッドに戻る。

      その動作以外は、ベッドから少しも移動しなかった。する必要が無かったから・・・。

      一日の大半は眠ることに費やした。なぜならそれが一番幸せだと感じたから・・・・。

      病院にも行かなかった。怖かったから・・・・大切な人を失うのが・・・・・。

      結局何一つしてやれなかった・・・・。本当のことも言えなかった・・・・・。

      あいつが喜んでくれるようなことも何一つとして出来なかった・・・・・。

    
      どんどん心が暗くなる、荒んでいく、後悔だけが蝕むように広がっていく・・・・・。

      白い世界が去った後は、黒い世界が僕を追い詰め苦しめる・・・・・・・。

      もう死んだほうがましだと強く思い、そして願った。

      全てはこれが始まりだったのだろう・・・・・・・・。

      廊下のほうから音がしたような気がした。耳を澄ませるとそれが気のせいでないことに気づく。

      僕は、ふらふらとおぼつかない足取りで廊下に出る。何かに誘われるように・・・・。

      景色が二重に見える・・・。流石にパンと水では無理があったようだ。

      朦朧とした意識で僕は長い廊下の向こうを見た。

      視界にそれが移った瞬間僕は驚きよりも、安堵の気持ちがこみ上げてきた。

      目の前には見知った黒髪の少女が立っていった・・・・・・。

      「秋・・・・乃・・・・・?」


      

      



                 
                        崩れ去る平穏

              囚われた存在へと与えられた自由へと続く道

               道を歩むため罪人は黒き蝶へと姿を変える






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                       「状況はどうだ?」

              険しい顔で、男は椅子に座る少女に問いかける。

     「予想外の事態ですね・・・・・・まさか出現した最初の個体がSSクラスとは・・・。」

     机に置かれたコーヒーカップの中身をスプーンで混ぜながら、少女は冷静にそう答えた。

     年は12、3歳といった所だろうか、ショートヘアの少女は容姿と話し方がまったく合っていない。

     「最初だけは、どんな規模の奴が現れるかわからんからな。」

     対する男は、かけた眼鏡が印象的で、年は20歳くらいだろうか。

     「作り手は保護できたのか?」

     男は机に肘を突きながらそう聞いた。

     「何とか間に合ったみたいです。多少ダメージを受けていますが、蓄積量はまだ問題ないかと。」

     少女はそう答えると、コーヒーに口をつけた。

     「誰が現場へ行ったんだ?」

     男は興味深げにそう聞いた。

     「単独で川瀬麻衣が現場に到着、その後は組織の人間が複数人。」

     「作り手の保護のため、麻衣が対象と交戦し撃退しました。どうやら対象の存在が不安定だったのが幸いしたようです。」

     そう答えると少女は、カップを机に置いた。

     「これから忙しくなるな・・・相手がこの規模だと生み出されるシャドーも多そうだ。」

     男はそう言ってから、深いため息をついた。

     「シャドーの処理は組織がするとして、問題はオリジナルですね・・・・・あそこまで形を持ってしまわれては・・・・・・。」

     「だからこそ、オリジナルと唯一交戦できる作り手が重要なのだ。ところで作り手の名は?」

     「名前は朝霧ハル、年齢は17歳で芸術家として有名な朝霧家の人間です。」

     「芸術家の・・・・・・・。」

     様々な運命が交差する中、夏の夜は更けてゆく。

     
2007.11.16 日常(6)
                      育ち続ける黒い花

                しかし決して太陽の光を浴びることはない

              誰かに見られることも無ければ、枯れることも無い

                      一輪の黒い花





                          6

         生まれたての子馬というものをを見たことがあるだろうか?

         足をがくがくさせて必死にがんばる姿は人の感動を誘うだろう。

         しかし、それは動物の生まれたての子供に当てはまることであり、

         これを人間が実行すると、心底情けない姿を晒す事となる。

    ゴリ山の地獄のしごきを何とか終えた僕は、正にそんな醜態を晒しながら教室に向かっていた。

    しかし、そんな状態の僕は後ろから不意に肩を叩かれた事により、床に倒れこむ事となった。

    正直もう何が起きても驚くことは無い。

    「うわっごめんな。まさか倒れるなんて思わなかったから。」

    誠実そうな声が上から聞こえる。

    僕はその男に手を貸してもらいながら立ち上がる。

    佐々木修二は、友人の中でも一番まともで、頼りになる奴である。

    その上秀才で、正直なぜ僕のような奴とつるんでいるのかは不明である。

    何はともあれ、これでようやく教室に向かえる。

    「なあ、お前なんでいっつも遅刻するんだ?わざとか?」

    教室に向かう廊下で、修二がが聞いてきた。

    別にしたくてしてる訳じゃないよ。ちょっと事情があってな。

    「そうか。」

    変な詮索を行わない所がこいつのいい所である。

    「そういやお前の家何処だっけ?今度遊びに行っていいか?」

    ああ、その内な。

    そんな話をしながら教室に着いた僕は、ドアを開けた。

    「クラス馬鹿代表のご到着〜〜〜〜〜〜♪」

    開けた瞬間、麻衣が嫌味っぽく叫ぶ。

    何度も言うが、これではどっちが馬鹿だか分からない。

    「いや〜ゴリ山に走らされてる姿は、見てるだけでいい暇つぶしになったよ♪」

    「授業聞けよ馬鹿・・・・。」と思ったが言うのはやめておいた。

    これ以上、この馬鹿女と争うこと自体が不毛だと悟ったからである。

    「悔しくないの〜?言い返さないの〜?」

    執拗に挑発する麻衣を無視して、僕は秋乃の方を見た。

    秋乃は困ったような顔でこっちを見ていた。僕がまた遅刻したからだろう。

    秋乃も僕と同じクラスである。ただ朝同様二人の関係がばれない様に、接点を作らない様にしている。

     こういう表情も他人から見れば、黒髪のロングヘアの美少女が悩ましげに何かを考えているように見えるのだろうか?

    こんなどうでもいいことを考えてしまった。

    「ちょっと!!聞いてんの?」

    懲りずに噛み付く麻衣に修二が、「もう諦めろよ・・・・・。」

    と言ったところで、チャイムが鳴って先生が入ってくる。

    隣から噛み付くような視線で見てくる麻衣を、軽く無視して僕はいつもどうり教科書を開いた。

    変わらない日常が、今日も流れていく。






7へ続く

    
2007.11.15 日常(5)
                    小さな種から黒い芽が出る

                  それは時が経つごとに成長してゆく

                  己自身はまだそれに気づくことは無い






                            5

              運とは、非常に重要なステータスの1つである。

        ギャンブルのみならず、今生きていられるということもこの運の賜物である。

    今朝の僕は運がない。生存できるくらいの運は持っていたが、それ以外は枯渇状態らしい・・・・・。

なぜなら今日の僕は既に遅刻が確定し、うざいクラスメイトに馬鹿にされ、その上今日も職員室にて説教を受けることが決定しているようなものだからである。

     しかし、今日の神様はもう自分を生き地獄に落とすことしか考えていないらしい。

     校門の前に立っている「それ」を見た瞬間、僕は久々に血の気が引いていくのを感じた。

     基本的に野生動物と出会った時は目を合わせてはいけない。

     目を合わせた瞬間に、敵とみなして襲ってくるからである。

     僕は「それ」と目を合わさないように、黙々と歩いて校門を通過しようとした。

     しかし、僕は後ろから加わった力によって、それ以上前に進むことが出来なかった。

     「どこに行くのかな〜♪朝霧く〜ん♪」

     図太い声が後ろから響く。

     しっかりと服を掴まれている、 覚悟を決めるしかないと僕は思った。

     清々しい良い朝ですね〜郡山先生〜♪

     僕は出来るかぎり爽やかに聞こえるようにそう言った。

     「そうだな〜まったくもってその通りだ。」

     よし注意を逸らしたぞ!!!もしかしたら助か・・・・・。

     「ところで今は何時かな〜?」

     その瞬間僕は敗北を確信した。

     「ついて来い。」

     そう言って「ゴリ山」こと郡山は歩き出した。

     しかし、方向は明らかに職員室ではない。

     先生そっちは職員室じゃないですよ・・・・?

     「しょくいんしつぅ〜?今日はもっと良いところに連れてってやんよ。」

     ゴリ山は不気味な笑顔でそう言った。

     そして辿り着いたのは運動場である。

     郡山先生、僕今から授業が・・・・・・。

     「担当の先生には連絡しておいてやるよ」

     もう逃げることさえ不可能である。

     「お前今から校庭20周な♪」

     さすが、教師陣最悪(最凶)の男こと、筋肉ゴリラのゴリ山である。

     「さっさと行け(逝け)やゴルァ〜〜〜〜〜!!!!!!」

     容赦ない体育教師の一言から逃げ出すように僕はヨタヨタと走り出した。



     6へ続く


長らく書かなかったブログで、懲りずに小説を書いてみました(笑)

訪問する人はほぼ居ないと思いますが、暇を見つけて書いていきます